もし、加害者が無保険だったら… 任意保険加入率・ワーストの都道府県は?【最新データ公開】
2025.5.1(木)
公道で車に乗るときは、強制加入の「自賠責保険」だけでなく、必ずその上乗せとして「任意保険」もかけておく……、これは日本のドライバーにとって「鉄則」ともいえる常識です。万一、重傷事故や死亡事故など、重大な人身事故を起こしてしまったとき、自賠責だけではとても賠償しきれないため、今の日本では二段構えの自動車保険で備えなければなりません。
しかし、現実はどうでしょうか?
つい先日、私は下記の記事を発信しました。
改造車の脱落タイヤ直撃で愛娘は今も意識不明、判決待つ父親の苦悩「加害者は無保険、口先では賠償すると言うが…」(JBpress) - Yahoo!ニュース
この事故は、2023年11月、札幌市西区で発生しました。不正改造をおこなった車が試運転中にタイヤを脱落させ、そのタイヤがお父さんと一緒に歩道を歩いていた4歳の女の子を直撃。頚髄損傷などの重傷を負った女の子は、事故から1年半たった現在も意識が戻らず、この先も回復の見込みがないというのです。
それだけでも許しがたい事案なのですが、本件の事故車は任意保険未加入で、加害者には億単位の損害賠償を行うことは難しく、極めて深刻な状況にあります。
詳しくは上記記事をご覧いただければと思いますが、ご家族は将来への不安を抱え、大変苦しんでおられるのです。
この記事には大きな反響があり、すでに配信先のYahoo!ニュースには、
「任意保険をかけずに車に乗るなど論外」
「賠償能力のない人間ほど任意保険に加入していない」
「賠償金を加害者から強制的に徴収する仕組みは必要だ」
といった厳しいコメントが500件近く寄せられています。
しかし、日本の道には、実際にこうした無保険車が多数走っています。
「任意保険のない車ではたとえ10メートルであっても運転したくない」というまじめなドライバーには、にわかに信じられないかもしれませんが、私は、任意保険未加入の車やバイクが起こした重大事故をこれまで何件も取材してきました(以下の記事をご参照ください)。実際に、そうした車はすぐそばを走っているのです。
●お父さんのいない、初めてのクリスマス… 中央線突破の「無保険バイク」に命奪われて(柳原三佳) - エキスパート - Yahoo!ニュース
●息子死なせた加害者、全財産は7000円 謝罪も賠償もないまま母国へ…(柳原三佳) - エキスパート - Yahoo!ニュース
■任意保険未加入「ワースト1」は、沖縄県
では、任意の対人保険をかけていない車はどのくらい存在するのでしょうか。
2025年4月に出されたばかりの『自動車保険の概況』(損害保険料率算出機構)に掲載されている、「任意自動車保険 都道府県別普及率表」から、2024年3月末の任意保険加入率を見てみましょう。
まず、任意保険(対人)普及率の高い都道府県ベスト5は、次の通りです。
1位 大阪府 82.8%
2位 愛知県 82.6%
3位 神奈川県 80.9%
4位 京都府 80.6%
5位 千葉県 79.8%
人口の多い大都市圏が上位にランキングされていますが、それでも8割前後にとどまっていることがわかります。
ちなみに東京都は、79.0%でした。
一方、ワースト5は、以下の通りです。
1位 沖縄県 55.0%
2位 島根県 59.8%
3位 高知県 62.3%
4位 宮崎県 62.4%
5位 鹿児島県 63.3%
いかがでしょうか。離島が多いとはいえ、沖縄県の55%には驚きますが、全国各地を見渡すと、対人保険加入率が60%台の都道府県がかなりあるのが実情です。
車種別でみると、「自家用普通乗用車」は83.2%なのに対し、「軽四貨物車」は56.7%、「二輪車」は47.0%となっています。
任意保険未加入車との人身交通事故に遭遇すると、相手には自賠責保険しかありませんので、最悪の場合、十分な賠償を受けられず、被害者は「泣き寝入り」を強いられる危険性があるのです。
任意保険の加入は当たり前だと思っていたら、とんでもない実態が……(写真:イメージマート)
■無保険車との事故にどう備えるべきか
ゴールデンウィークがはじまり、長期の休みを利用しての旅行やドライブを計画している人も多いと思いますが、こうしたデータを見ていると、旅先で無保険車に遭遇しないとは限りません。
では、任意保険未加入の車との事故に備えるにはどうすればよいのでしょうか。
上記で紹介した記事『改造車の脱落タイヤ直撃で愛娘は今も意識不明、判決待つ父親の苦悩「加害者は無保険、口先では賠償すると言うが…」(JBpress) - Yahoo!ニュース』の被害女児のお父さんは、インタビューの中でこう語っておられました。一部抜粋させていただきます。
『私が所有する車の任意保険には「人身傷害補償保険」がついていました。しかし、その対象は「契約車に搭乗中」のみに限定されていたため、今回のような歩道上での被害は適用外だったのです。歩行中や自転車乗車中など、家族が車外で事故に遭った場合でも補償される「車外危険担保特約」を契約しておけば、本件のようなケースでもとりあえず自分の自動車保険でカバーできたことを、事故の後で知りました。
ほんの少しの保険料を追加するだけで、万一のとき保険金の支払いにこれほど大きな差が出るということを、ぜひ知っておくべきだと思いました』
このコメントを読まれた方は、ぜひ一度、ご自身の車にかけている任意保険の証券を確認してみてください。人身傷害補償保険に「車外危険担保特約」がついているかいないかの差は大きく、補償範囲がかなり変わります。この特約を外している場合は、ぜひ保険会社に問い合わせた上、追加しておくことをおすすめします。
車を複数台所有している場合は、1台だけこの車外特約をつけておけばOKです。
マイカーを持っていない人は自動車保険に加入することができないので、ご自身や家族が万一の被害に遭ったときのために傷害保険等で備える必要があります。
任意保険加入率は決して100%ではありません。軽トラックやバイクはその半数が未加入だということを認識し、自衛することが大切です。