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「青信号で横断した娘がなぜ」愛娘の遺体と撮った最後の家族写真

信号無視で罪なき愛娘の命奪った運転手、その不誠実さに遺族憤怒

2021.11.20(土)

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「青信号で横断した娘がなぜ」愛娘の遺体と撮った最後の家族写真

「24秒に1人・・・」

 この数字がいったい何を意味しているか、ご存じでしょうか。

 実はこれ、地球上で「交通事故」によって亡くなっている人の数です。

 想像してみてください、今もどこかで、誰かが、交通事故に遭い、24秒に1人、突然、命を落としているということです。

日本では戦後から現在まで95万人超の人が犠牲に

 もちろん、交通事故の被害は「死亡」だけではありません。負傷者も含めれば1秒間に何人が被害に遭っていることでしょう。そして、「一命をとりとめた」という報道の裏側には、元の生活には戻れないような、深刻な後遺障害を負っている人も多く、一瞬の事故が多くの被害者とその家族の人生を狂わせているのです。

 ちなみに、WHO(世界保健機関)が2018年12月に発表した報告書によると、世界では、交通事故で死亡した人が年間135万人にも上っているとのこと。負傷者数については正確なデータはありませんが、毎年2000万人から5000万人にのぼるのではないかと推計されています。

 この、あまりに大きな被害の実態に、WHOのテドロス事務局長は、「この犠牲は、交通の代価として容認できない」と声明で指摘したほどです。

 また、日本だけで見ると、戦後(1946~2019年)、95万人超の交通事故死者を生み、負傷者数は4678万人にのぼっています(『犯罪白書』より)。

 周りを見渡せば、おそらくあなた自身やその家族、友人などに交通事故の経験をした人が誰かしらいるのではないでしょうか。そして、この先の人生においても、「自分だけは絶対に交通事故には遭わない」と言い切れる人は誰もいないのです。

11月第3日曜は『世界道路交通事故被害者の日』

 こうした状況を重く見た国際連合は、世界的な道路安全の向上をめざすべく、2005年10月の総会において、「国際社会は毎年11月の第3日曜日を、世界道路交通被害者の日(World Day of Remembrance for Road Traffic Victims)として認識するよう要請する」との決議を行いました。

 そして、世界各国で同じ日に、「世界道路交通被害者の日(World Day)」として交通事故による死傷者を想い、被害ゼロのための行動を決意する日として、さまざまな取り組みが行われるようになったのです。

 実は、「World Day」のそもそもの発端は、家族を交通事件で失ったイギリスの母親らが中心となって1993年に立ち上げた「ロードピース」というNGOでした。その活動はヨーロッパを中心に支持を広げ、「国際道路交通安全協会」、「欧州道路交通被害者連盟」など、複数のNGOによって、世界各地で開催されるようになりました。

 そして、2003年9月、WHOが各組織を集めて懇談会を主催したことをきっかけに、交通安全を呼びかける機関の非公式なネットワークが誕生し、上記のとおり、2005年の国連総会の議決へとつながっていったのです。

 こうした経緯を見ていくと、やはり、交通事故で大切な家族を亡くした遺族の思いの強さと、事故撲滅への信念を痛感します。

 国連は2005年の決議で、「交通事故被害軽減のための重点的な取り組み課題」として、

●シートベルトやチャイルドシートの着用
●ヘルメットの着用
●飲酒運転の防止
●過剰な速度違反の防止
●道路インフラの整備

 等の項目を挙げ、発展途上国については資金や技術面での国際支援を行うことも表明しています。

 あれから16年が経過した今、シートベルトやチャイルドシートの着用はかなり普及し、多くの人の命を守ってきました。しかし、日本では未だに、「飲酒運転」や「過剰な速度違反」による死亡事故が後を絶たず、今後の課題は山のように残されていると言えるでしょう。

(参考)WHO |道路交通の犠牲者のための世界の追悼の日
https://www.who.int/roadsafety/projects/world_day/en/

誰もが被害者にも加害者にもなり得る交通死亡事故

 さて、イギリスで「ロードピース」が立ち上がって28年目となる2021年、今年の「世界道路交通被害者の日」は、11月21日(日)にあたります。

 日本でもこの活動の意義は全国に広がり、「世界道路交通被害者の日・日本フォーラム」によって、前日から全国各地でさまざまな取り組みが行われます。

 11月20日(土)には、港区芝公園で東京タワーを背景にキャンドルを灯し、祈りをささげる「World Day東京集会」が開かれます。

東京集会のチラシ

東京集会のチラシ(https://drive.google.com/file/d/1nchaCAEZPNuOwO_xGBjQ-cxLER850Toh/view?usp=drivesdk)

 呼びかけ人の小栗幸夫氏(千葉商科大学名誉教授、Soft Mobility Initlative)は、こう語ります。

「世界の道路交通の被害は依然として途方もなく、悲しみはさらに大きくなっています。この被害は、被害者、加害者の立場に関わらず、いつでも、だれにでも起こることです。しかし、『世界道路交通被害者の日(World Day)』の活動は、まだまだ認知度が低く、地球環境問題がグローバルに注目されることと対照的です。これは一方で、自動車中心の社会構造が強固なこと、他方で、被害者活動のつながりがまだ充分でないことなどが原因だと思います。『World Day』は、決して被害者だけが参加するものではなく、被害を経験した人と、そうでない人の溝を埋めるためにあるべきだと思っています。私たちはさらに連帯し、現代文明のもたらした暴力と闘わねばなりません。イギリスの被害者の呼びかけからはじまり、国連が採択し、国連が年に一度、11月の第3日曜日にこうした日を設けていることを、ぜひ多くの方に知っていただきたいのです」

 20日(土)に開催される東京集会への参加は自由です。お時間のある方はぜひ足を運んでみてください。

過去の「World Day東京集会」の様子(長谷智喜さん撮影)

過去の「World Day東京集会」の様子(長谷智喜さん撮影)

 また、遠方の方や外出ができない方は、Zoomで参加することも可能です。

 悲惨な交通事故の報道を目にしない日はありません。被害者にも加害者にもならないためにはどうすればよいか、「世界道路交通被害者の日(World Day)」にぜひ思いを馳せていただければと思います。

●Zoom参加の方はこちら
Launch Meeting - Zoom(16:30~18:30)
https://us06web.zoom.us/j/81321323368?pwd=a1VIMWptOVg0azRJMXZVTVEvbEhodz09#success

●世界の「World Day」の動きについてはこちらをご覧ください
道路交通の犠牲者のための世界の追悼の日 (worlddayofremembrance.org)
https://worlddayofremembrance.org/#top