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【夏休み】命を守る「チャイルドシート」タクシーやレンタカーでの移動時はどうする?

2022.7.27(水)

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【夏休み】命を守る「チャイルドシート」タクシーやレンタカーでの移動時はどうする?

 日本の道路交通法では、6歳未満の幼児にチャイルドシートの着用が義務付けられています。お子さんがいらっしゃるご家庭ではもちろん、月齢に応じたチャイルドシートをマイカーに装着されていることと思います。
 でも、夏休みになると、旅行や帰省などで、レンタカーやバス、タクシー、親戚の車など、マイカー以外にお子さんを乗せる機会も増えるのではないでしょうか。

 では、そんなとき、チャイルドシートはどう準備すればよいのか? また、着用免除の規定などはあるのでしょうか?
   そこで、お出かけする前に、また、お孫さんや親せきのお子さんを迎え入れる前に、改めてそのルールを確認しておきましょう。

■バス、タクシー、ハイヤーは、チャイルドシートの着用免除

 まず、道交法では、「旅客」としてバスやタクシー、ハイヤーに乗車する場合は、チャイルドシートの着用義務が免除されています。こうした乗り物に「客」として乗る場合は、大人がシートベルトをして子どもを抱くというかたちになります。

 とはいえ、やはり子どもを抱いて乗るのは不安だという人は、自前のチャイルドシートを持参するか、チャイルドシート付きのタクシーを検索し、事前に予約しておくことをおすすめします。

「キッズタクシー」という子ども向けのサービスを導入しているタクシー会社もあり、チャイルドシートの用意はもちろん、子どもとのやりとりに慣れた乗務員が対応してくれるので、何かと安心です。ぜひ調べてみてください。

タクシーではチャイルドシートは免除されているが、不安なときは自前のものを用意するか、チャイルドシートの用意があるタクシーを予約しよう(写真:イメージマート)

タクシーではチャイルドシートは免除されているが、不安なときは自前のものを用意するか、チャイルドシートの用意があるタクシーを予約しよう(写真:イメージマート)

■レンタカー・カーシェアはマイカーと同じく着用義務あり

 レンタカーやカーシェアリングの場合は、基本的にマイカーと同じで、チャイルドシート着用免除の対象にはなりません。
 多くのレンタカー会社では子どもの年齢に応じたチャイルドシートを用意していますので、車と一緒に予約を入れておくことが大切です。

 ご自身で所有しているチャイルドシートを持参する場合は、レンタルする車種にそのチャイルドシートが取り付け可能かどうかを、事前にしっかり確認しておきましょう。

■授乳など特殊な事情がある場面では着用免除

 ただし、マイカーやレンタカーであっても、特殊な事情があるときに限り、着用義務は免除されます。
 例えば、ケガや病気などで、子どもをチャイルドシートに固定できないような場合です。

 また、走行中の車内で授乳したり、オムツを替えたり……、どうしてもチャイルドシートをしたままでは行えないような場面でも、一時的にチャイルドシートの着用義務を免除されます。

 とはいえ、チャイルドシートなしで走行中の車に乗せることは、どんなに短い時間であっても危険です。できれば授乳やオムツ替えは、車を停めているときに行いたいですね。

暑い夏は子どもをチャイルドシートに固定するのも大変ですが、退屈しないよう工夫してあげましょう(写真:イメージマート)

暑い夏は子どもをチャイルドシートに固定するのも大変ですが、退屈しないよう工夫してあげましょう(写真:イメージマート)

■他人の車に乗るときも着用義務あり

 実家に帰省したとき、親や親せきの車に乗ることもよくあると思います。この場合ももちろん、マイカーと同じくチャイルドシートを着用しなければなりません。
 チャイルドシートがない車に6歳未満の子どもを乗せると、運転者に違反点数が加算されますので気をつけてください。

 こうした場合は、子どもを連れていく保護者がチャイルドシートを持参する、もしくはあらかじめ現地に送っておきましょう。実家の車に子どもを頻繁に乗せる可能性があるなら、新たにチャイルドシートを購入するか、レンタルしておくのもよいでしょう。

■米国のタクシーは、保護者にチャイルドシートの義務づけ

 実は、同じチャイルドシートでも、アメリカでは日本とずいぶん考え方が違うようです。
 日本の場合、タクシーはチャイルドシートの装着義務が免除されていますが、アメリカの多くの州では、タクシーでも保護者に装着が義務付けられています。

 カリフォルニア州で長年、プロのドライバーをつとめてこられた、Jun Jim Tsuzukiさんがこんなお話をしてくださいました。

「空港でタクシーやリムジンなどの送迎ドライバーからよく聞いたのですが、チャイルドシートを持たずに子供を抱えて乗り込もうとする母親に『お客様、カリフォルニア州では8歳未満で、体重18キロ未満のお子様はチャイルドシートの着用が義務になっていますよ』と言うと、多くの親が『大丈夫よ、私がしっかり抱えてますから。いつもこれでOKなの』と答えるそうです。ところがドライバーが、『そうですか……。念のためにお伝えしておきますが、カリフォルニア道交法では、違反切符の$500は、ドライバーの私ではなく、同乗している親が切られることになっています』そう言うと、母親は慌ててチャイルドシートの手配をするそうなんです。結局、5万円を超える罰金を払うよりも、その辺でチャイルドシートを買った方が安いんですよね。ですから、アメリカでは多くの親が、旅行でも自前のチャイルドシートを飛行機の預け荷物で持ってきますね」

 たしかに、タクシーだからといって事故に巻き込まれないとは限りません。『子どもの命を守るのはあくまでも親の責任である』という考えが徹底されていますね。

 ちなみに、カリフォルニア道交法では、

チャイルドシートは、運転者に装着義務がある。ただし、親や保護者が同乗している場合、運転者の義務は除外され、親や保護者が違反切符を切られる。

また、助手席に座れるのは8歳以上に限定されており、

2歳以下 ⇒後ろ向きのチャイルドシート

8歳以下 ⇒チャイルドシート 身長によりブースターシート+通常のシートベルト

 と、細かく規定されています。

■チャイルドシートなしの場合、子どもの死亡率は5.3倍に!

 さて、ここまではチャイルドシートの着用義務について、基本的なことをおさらいしてきましたが、とにかく一番大切なことは「2点の違反切符を切られないこと」ではなく、「子どもの命を守ること」です。

 警察庁の統計によると、チャイルドシートを正しく装着していなかった子どもの死亡率は、正しく装着していた子どもたちの5.3倍に上っています。(*下記グラフ参照)

 また、一命をとりとめても、一生涯にわたって重い障害を残す子どもたちもいます。
『子どもを車に乗せる』という行為の先には、そうした厳しい現実があることもしっかり認識してください。

警察庁のサイトより

警察庁のサイトより

■チャイルドシート、正しく固定しないと効果なし

 チャイルドシートはできれば後部座席に取り付けてください。  もし、助手席に取り付けざるを得ない場合は、万一のとき、子どもが展開したエアバッグの被害を受けないよう、助手席のシートを一番後ろまで下げておくことが必要です。

 せっかくチャイルドシートを用意しても、固定の仕方に不備があると万一のときに効力を発揮しません。この機会に今一度、正しい装着ができているかどうか確認しておきましょう。

警察庁のサイトより

警察庁のサイトより

 この夏、お子さんを連れてお出かけする方は、出発前にぜひ警察庁のサイト『子供を守るチャイルドシート』と、全日本交通安全協会提供の動画『チャイルドシートで守ってね』をご覧ください。

●子供を守るチャイルドシート|警察庁Webサイト (npa.go.jp)

DVD「チャイルドシートで守ってね!」(動画)

<参考/チャイルドシートに関する法律>

●道路交通法第71条の3第3項

自動車の運転者は、幼児用補助装置(幼児を乗車させる際座席ベルトに代わる機能を果たさせるため座席に固定して用いる補助装置であつて、道路運送車両法第三章及びこれに基づく命令の規定に適合し、かつ、幼児の発育の程度に応じた形状を有するものをいう。以下この項において同じ。)を使用しない幼児を乗車させて自動車を運転してはならない。ただし、疾病のため幼児用補助装置を使用させることが療養上適当でない幼児を乗車させるとき、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときは、この限りでない。