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自転車の「ひき逃げ」動画公開で親が震撼、「もし我が子が加害者になったら」

子どもの自転車が起こした事故で親に巨額の賠償責任がのしかかることも

2022.12.25(日)

JBpress記事はこちら

20221225

 まずはこちらの動画をご覧ください。

自転車による「ひき逃げ事故」の瞬間動画

 歩行者用信号が青に変わり、横断歩道を渡り始めた女性に、信号無視の自転車が激しく衝突。2人は絡み合うように路上に転倒します。ところが、自転車の男性は起き上がれずにいる女性を救護しようともせず、そのまま自転車にまたがって逃走したのです。女性がその直前、必死で「警察に届けるから、待ちなさい!」と叫んでいる声も聞こえます。

【編集部註:外部配信先サイトでご覧の方で動画が見られない場合はJBpressのサイト()でご覧ください】

被害者自ら交渉して防犯カメラの映像を入手

 事故が発生したのは、2022年10月18日の午後3時半頃。現場は、池袋駅からほど近い、南池袋3丁目の横断歩道です。

事故の現場となった南池袋3丁目の横断歩道

事故の現場となった南池袋3丁目の横断歩道

 この事故の被害に遭ったAさんは、すぐに救急車で搬送されましたが、幸い骨折はなく、全身打撲で全治4週間と診断されました。とはいえ、動画を見ると相当の衝撃を受けていることがわかります。もし頭を強打していたら、危険な状況になっていたかもしれません。

 事故から1カ月以上経ち、ようやく仕事に復帰したというAさんは、加害者がなかなか捕まらないことに不安を感じ、筆者に連絡をしてこられました。そして、自ら事故現場の正面に建つビルに出向き、防犯カメラの映像を入手したのです。そこには、衝突の瞬間映像だけでなく、音声もしっかりと記録されていました。私たちは相談を重ねたうえで、この動画と共に記事の公開に踏み切ったのです。

【ひき逃げ】瞬間映像公開 自転車が歩行者に衝突「やべぇ」男は現在も逃走中(柳原三佳: Yahoo!ニュース個人)
https://news.yahoo.co.jp/byline/yanagiharamika/20221209-00327421

 その後、上記記事を見た多くの読者がSNS等を使ってこの動画を拡散。テレビ局からも相次いで連絡があり、民放4社がさまざまな番組でこの瞬間映像を流して情報提供を呼びかけました。この事故のことは、テレビなどで目にしたことがある、という方も多いのではないでしょうか。

 池袋という人通りの多い都会で発生した事故だけに、動画が公開された直後は、

「おそらく加害者はまもなく出頭するだろう」

「防犯カメラがあちこちにあるから、必ず警察が逮捕してくれるはず」

 といったコメントが次々と寄せられ、Aさんも期待していました。ところが、事故発生から2カ月以上経った今も有力な手掛かりはなく、未だにひき逃げ犯の逮捕には至っていないのです。

 もし、この男性に心当たりのある方は、本原稿の末尾に警察の連絡先を記しましたので、ぜひ情報提供をお願いできればと思います。

自転車に乗っていて誰かを死傷させてしまったら…

 さて、この事故の動画を公開してからというもの、被害者への支援メッセージや犯人の早期逮捕を望む声が数多く寄せられているのですが、その一方で、「自分や家族が自転車乗車中、万一、このような人身事故の加害者になってしまったらどうすればよいのか……」といった不安の声も高まっているのが現状です。

 自転車は「道路交通法」において「軽車両」と位置づけられており、れっきとした車両です。法律に違反をして交通事故を起こすと、自転車の運転者は刑事上の責任問われ、人を死傷させると「重過失致死傷罪」に問われます。

 また相手を死傷させた場合は、当然のことながら、治療費や慰謝料、逸失利益など、民事上の損害賠償責任も発生します。

 そして、忘れてはならないのが、「道義的な責任」です。自分の過ちで事故を起こしたら、被害者に対して誠実に謝罪し、相手がけがをした場合はきちんと見舞う必要があります。

 自転車は子どもから大人まで、免許なしで気軽に乗ることのできる便利な乗り物です。しかし、今回のような加害事故は決して他人事ではないのです。

未成年が起こした自転車事故でも1億円近い賠償請求が!

 では、もしわが子が自転車で歩行者を死傷させるような事故を起こした場合、保護者はどのくらいの損害賠償請求をされるのでしょうか。

 日本損害保険協会のサイトには、「自転車での加害事故例」と題して、複数の高額賠償事例が掲載されています。そのベスト3は、いずれも未成年の児童や生徒の自転車による加害事故でした。

 以下、同サイトから抜粋させていただきます。

1)9521万円
男子小学生(11歳)が夜間、帰宅途中に自転車で走行中、歩道と車道の区別のない道路において歩行中の女性(62歳)と正面衝突。女性は頭蓋骨骨折等の傷害を負い、意識が戻らない状態となった。(神戸地方裁判所、平成25(2013)年7月4日判決)

2)9330万円
男子高校生が夜間、イヤホンで音楽を聞きながら無灯火で自転車を運転中に、パトカーの追跡を受けて逃走し、職務質問中の警察官(25歳)と衝突。警察官は、頭蓋骨骨折等で約2か月後に死亡した。(高松高等裁判所、令和2(2020)年7月22日判決)

3)9266万円
男子高校生が昼間、自転車横断帯のかなり手前の歩道から車道を斜めに横断し、対向車線を自転車で直進してきた男性会社員(24歳)と衝突。男性会社員に重大な障害(言語機能の喪失等)が残った。(東京地方裁判所、平成20(2008)年6月5日判決)

 いかがでしょうか? 自転車での交通事故でも、被害者が亡くなったり、重度の後遺障害を負ったりした場合は、これほど高額の賠償金を支払わなくてはならないのです。加害者が子どもだからと言って、賠償責任を逃れることはできません。

万が一に備えて個人賠償責任保険を

 自転車には自動車のように「自賠責保険」や「任意保険」の制度がありませんので、最悪の事態が起こったとき、被害者に十分な賠償をおこなえるように、必ず「個人賠償責任保険」に加入しておかなければなりません。

 自治体によっては既に自転車の賠償保険を義務付けているところもありますが、まだ加入していない方は、「自転車保険」というキーワードで検索し、早急に契約することをお勧めします。

 保険料は1カ月数百円程度と安価です。また、すでにかけている親の自動車保険などに個人賠償保険がついている場合がありますので、確認してください。

事故を起こしたら必ず被害者を救護し、警察に届ける

 警察庁の調べによると、昨年(2021)に発生した自転車乗車中の交通事故は6万9694件。およそ7.5分に1件の割合で発生していることになります。また、自転車事故による死傷者数は6万8114人でした。

 しかし、自転車と言えども、「ひき逃げ」だけは絶対にしてはいけません。

 事故を起こしたのにもかかわらず現場から逃げるという行為は、「助かる命をも助けずに見捨てる」という極めて悪質なものです。万一事故を起こした場合は、必ず被害者を救護し、警察に届け出なければならないということを、日ごろから子どもたちにしっかり教えておくことが大切です。

<池袋/ひき逃げ事件詳細と犯人の特徴>

 冒頭で紹介した動画の事故の加害者が今も逃走中です。情報をお持ちの方はご協力をお願いいたします。

●発生日時/2022年10月18日午後3時27分頃
●事故現場/東京・南池袋3丁目の横断歩道
●犯人のルート/池袋駅方面から目白方面へ走行中に事故。そのまま目白方向へ。その後、路地へ入って逃走
●犯人の特徴/20歳くらいの男性
●自転車/赤色のスポーツタイプの自転車
●着衣/黒い上着
●連絡先/目白警察署 交通捜査課係 03-3987-0110(内線4252)