エンストしたら、突然、ブレーキが効かない! 死亡事故も発生。そのからくりを知っていますか? #エキスパートトピ
2025.7.18(金)
14日、東京都で高齢者施設の送迎車が下り坂で電柱に衝突。9人が死傷する事故が発生しました。運転手は当初から「ブレーキが効かなかった」と供述していたようですが、以下の『共同通信』記事にある通り、この車は何らかの理由でエンストし、ブレーキが利きにくくなった可能性が高いことが明らかになっています。
実は、エンストが原因と思われる重大事故は過去にも複数起こっており、筆者も取材したことがあります。また、国土交通省もウェブサイトで注意喚起しています。
なぜエンストするとブレーキが効きにくくなるのか、まとめました。
ココがポイント
下り坂のため前進し、エンストしてブレーキが利きにくくなった可能性がある。同様の現象は以前相次ぎ、国土交通省は注意喚起
エンストを起こして、ブレーキやハンドルが利かないと思ったら、力を込めて操作してください。(中略)危険の回避ができます。
出典:国土交通省
ブレーキペダルを2度、力いっぱい踏みました。しかし、瞬時にスーッと抵抗力がなくなり、下りで加速したまま交差点内に進入
エキスパートの補足・見解
車のメカに詳しい方はご存じだと思いますが、ブレーキペダルを踏むとブレーキブースターという部品がエンジンの吸気負圧(真空)を利用して、ブレーキ操作力を低減してくれます。つまり、小さな踏み込みでも強力な制動力を発揮することができるのです。ところが、エンジンが止まると負圧がなくなるため、次第にブースターが機能しなくなり、ペダルの反応が悪くなっていきます。そして、何回か踏んでいるうちに、完全に補助機能が失われるのです。
上記で紹介した国土交通省のサイトでは『エンストが起きてもあわてずに、危険を回避しましょう』というキャッチで、次のような注意喚起がなされています。
1)エンストを起こした場合には、エンジンの力を用いた倍力装置等が作動しなくなるために、“ブレーキが利かなくなる”、“ハンドルが利かなくなる”と感じられます(以下略)。
2)エンストを起こして、ブレーキやハンドルが利かないと思ったら、力を込めて操作してください。操作可能となり、危険の回避ができます。
万一エンストしたらすみやかに車を路肩に寄せて車を停止させましょう。車種にもよりますが、止まり切れないときはあわてず、サイドブレーキも活用してください。