今日は2歳のお誕生日。こうちゃんはいないけれど… 「究極のながら運転」に我が子の命奪われて
2025.8.2(土)
「8月2日は、こうちゃんの2歳のお誕生日です。本来なら、お姉ちゃんと一緒にケーキを食べて、好きなキャラクターや乗り物のおもちゃをみんなからプレゼントされて、きっとニコニコして過ごしていただろうと思います」
そう語るのは、大阪の神農彩乃さん(38)です。
「我が家は子どもたちが夏生れなので、昨年は娘と息子の誕生日旅行として海に行きました。『楽しかったね。来年も行こうね。みんなで行こう。きっと来年は2人とも大きくなるから、もっといろんなことが楽しくなるね』と話をしていたことを昨日のことのように覚えています。ですが、それは永遠に叶わなくなりました……」
■ドライブレコーダーに記録されていた正面衝突の瞬間
以下の動画は、2024年9月21日、午後0時50分頃、高知県の自動車専用道路で記録された神農さんの車のドライブレコーダー映像です。対向車が突然センターラインを突破し、神農さん夫婦と2人の子どもが乗る車に正面衝突するまでの一部始終が映っていました。
この事故により、後部座席でチャイルドシートに座っていた1歳1カ月の長男・煌瑛(こうえい)ちゃんが亡くなったのです。
事故の状況については、以下の記事をご覧ください。母親の彩乃さん、そして車を運転していた父親の諭哉(ゆうさい)さん(34)の体験をそれぞれに伺い、まとめています。
【母親・神農彩乃さんへのインタビュー】
こうちゃんのいないクリスマス… 我が子失い、自身も重傷負った両親が「正面衝突」の瞬間動画公開(柳原三佳) - エキスパート - Yahoo!ニュース
【父親・神農諭哉さんへのインタビュー】
「息子の胸は切り開かれ、小さな心臓が見えて…」父の悔恨と怒り ドラレコ映像公開【高知正面衝突事故】(柳原三佳) - エキスパート - Yahoo!ニュース
前部が大破した神農さんの車(神野さん提供)
■事故から10カ月、ようやく加害者を起訴
8月1日、煌瑛ちゃんの誕生日の前日に大きな動きがありました。
本件事故を起こした竹崎寿洋容疑者(61)が、事故から10カ月余りたって「自動車運転過失致傷罪」で在宅起訴されたのです。
以下は起訴状の要旨です。マイカー(トヨタ・クラウンクロスオーバー)の自動運転機能(運転支援装置)を妄信した竹崎被告の危険な運転行為について、検察は以下のように具体的に指摘しています。
<起訴の要旨>
1) 運転支援装置(レーントレーシングアシスト)を作動させていたが、これは車線維持に必要なハンドル操作を支援するものに過ぎない。
2) 自動運転システムではなく、前方への注意を軽減する装置ではない。
3)よって、前方左右を注視し、適切にハンドル操作をして運転すべき自動車運転上の注意義務が被告人にはあった。
にも関わらず、被告人は、前方左右を注視せず、サンダルに履き替えるため、シートベルトを外し、身体を大きく左に倒し、助手席足下に置いてあったサンダルに左手を伸ばし、適切にハンドル操作ができない状態で漫然と時速63kmから65kmで進行した過失。
その結果、右手で握っていたハンドルを引き寄せるようにして右へ急転把させて対向車線にはみ出させ、被害車両と正面衝突させて神農さんらを死傷させた(負傷者3名、死亡者1名)。
対面の自動車専用道路はドライバーにとって、それだけで緊張を強いられる道です。そのような場所で、あろうことか加害者は、ゴルフ場の行き帰りにシートベルトを外し、日常的に着替えをしたりする無謀運転を繰り返していたそうです。そして今回、運転しながらサンダルに履き替えようとして、この重大事故を引き起こしたのです。
神農さん夫妻は、「本件は。けっして”うっかり”の過失で起こった事故ではない」として、「危険運転致死傷罪」の適用を求めて検察庁に要望書を提出していました。しかし、結果的に同罪の適用は見送られたこのです。
8月1日、母親の彩乃さんは、加害者の起訴を受けて開いた記者会見の席で涙を拭いながらこう訴えました。
「こんなに『ながら』が増えたのに、危険運転に入れないってなったら、法治国家なのにどうしようもないじゃないって……」
そのときの模様は、以下のニュース映像でご覧いただけます。
高知1歳児死亡事故 男の起訴を受け遺族が会見 「ながら運転」の厳罰化求める(ABCニュース) - Yahoo!ニュース
可愛い盛りだった煌瑛ちゃん(遺族提供)
■厳罰が同様の事故の抑止につながれば
神農さん夫妻は、煌瑛ちゃんの誕生日である本日8月2日から、家族4人で最後に過ごした高知市内で2日間にわたって街頭署名活動を行う予定だといいます。
父親の諭哉さんは、その目的についてこう語ります。
「一歩間違うと凶器になる自動車での極めて自己中心的な行為は、決して許されるものではありません。しかし、このような“究極のながら運転”で死傷事故を起こしても、現行法では『危険運転致死傷罪』に問うことはできず、単なる不注意、うっかりミスの『過失運転致死傷罪』で裁くことしかできないそうです。私たちには到底納得できませんが、それが今の日本の限界なら、過失運転致死傷罪の中でもできる限りの厳罰が下されるべきだと思っています。このままでは、また別の家族に同じ悲しみが襲いかねません。だからこそ、こうした運転は『許される行為ではない』ということを、社会がはっきりと示す必要があります。
煌瑛が生まれた日も、そして事故の日も、暑くて晴れた日でした。 息子との思い出はたくさんあるけれど、そこにはいつも夏の青い空が広がってました。毎年、夏がくるたびに、空がいろんなこととを思い出させてくれるのでしょう……。皆さん、どうかお力をお貸しください」
<高知市内での街頭署名のお知らせ>
●日時/8月2日(土)~3日(日) 10:00~15:00、
●場所/高知市内の「帯屋町パラソーレ」付近
(帯屋町パラソーレ | プロジェクト | 高知広告センター | 広告・CI・調査・マーケティング開発)
*署名に関する問い合わせ先/20230802kou@gmail.com
*署名用紙はこちら
https://drive.google.com/file/d/1XFiHUyFapWhkSTPyrxjbcSkEIfEkwiO2/view?usp=drivesdk