「赤信号無視」による横断歩道上の死傷事故はどう裁かれてきたか…。量刑の差と被害者、遺族の思い #エキスパートトピ
2025.9.27(土)
今年1月、JR郡山駅前で大学受験に訪れていた10代の女性が飲酒運転の車にはねられ死亡した事故。危険運転致死傷の罪で起訴された男は酒気帯びの状態で車を運転したうえ、約70kmの速度で信号無視を繰り返して交差点に進入したとして、懲役12年の判決を受けました。 女性の遺族は今月22日、量刑を不当として控訴するよう地検に申し入れを行ったことを公表しました。
青信号を守って横断歩道を渡る歩行者を、信号無視ではねるという危険な行為に対する刑罰はどうあるべきなのか。現状のままでよいのか。過去の事案を振り返ります。
ココがポイント
遺族は「現在の交通事犯の悪質性、被害の重大性、一般社会の考え方に照らし、判決内容は軽い」としています
国道交差点で横断歩道を渡っていた夫婦が車にはねられ、死亡した事故の裁判で、甲府地裁は運転していた女に禁固3年の実刑判決
出典:日テレNEWS NNN
懲役6年6カ月という判決は、『殊更赤信号無視』という一方的なルール違反によって11歳の娘の命を奪った結果に対しては、軽い
実刑とはいえ、わずか2年4か月……(中略)加害者の悪質な違反行為によって、これから一生涯、ベッドの上での生活を強いられる
エキスパートの補足・見解
青信号の横断歩道は、歩行者にとっての「セーフティーゾーン」です。しかし、赤信号を無視する危険な車は後を絶たず、横断歩道上で歩行者がはねられて死傷するという痛ましい事故は相次いでいます。私自身、これまで同様の事故を数多く取材してきましたが、同じ赤信号無視でも、判決結果にはかなりの差が生じているのが現実です。
ここでは4つのケースを取り上げました。いずれも、赤信号無視による横断歩道上での重大事故ですが、裁判官の判断によってその量刑は大きく異なっています。
理由は、事案ごとの事実関係や被害の重軽、証拠、法的な評価が多様であること、また、被告の反省の有無や抗弁の仕方、弁護人の戦略、検察官の力量などさまざまな要因もからんでいますが、最も大きいのは、事故時の速度や飲酒の有無、「危険運転」に該当すると判断されれば量刑は格段と重くなります。
しかし、被害者側にとってみれば青信号の横断歩道で事故に遭うる無念さは筆舌に尽くしがたく、加害者がどのような状況にあったとしてもその悔しさは変わりません。
横断歩道での信号無視はそれ自体を危険な行為と重く見て、もっとすみやかに、そして厳格に裁かれるべきだと思います。