「ひどいなこりゃぁ!」加害者の“憤慨肉声“に、我が子失った両親唖然… 【1 歳児死亡事故・会見詳報】
2026.2.13(金)

2024年9月、高知東部自動車道で中央線を突破してきた対向車に正面衝突され、1歳になったばかりの神農煌瑛(かみのこうえい)ちゃんが死亡、両親の神農諭哉(ゆうさい)さん、彩乃(あやの)さんが重傷を負いました。加害者は自車のオートクルーズ機能を過信し、運転中に靴を履き替えようとしたことがわかっています。
本件事故で「過失運転致死傷罪」に問われている高知市の無職・竹崎壽洋(としひろ)被告(61)に対する第2回公判が、2月4日、高知地裁で開かれました。
この日、法廷では加害車のドライブレコーダー映像(前後)が公開され、被告が走行中にシートベルトを外して警告音が鳴る状況や、事故後、救護活動を一切行っていなかった様子などが音声とともに映し出されました。
法廷で行われた映像の証拠調べと遺族の証人尋問の模様は、すでに以下の記事でレポートししたとおりです。
息せぬ息子の名を叫ぶ父、自車の傷見て舌打ちする加害者 法廷でドラレコ再生【1歳児死亡事故・裁判詳報】(柳原三佳) - エキスパート - Yahoo!ニュース
今回は上記記事に続き、高知県庁で開かれた記者会見の内容をレポートするとともに、被告のドライブレコーダーに記録されていた音声データの抽出と解析に臨んだ遺族の取り組みをご紹介したいと思います。

2月4日、第2回公判終了後に高地県庁で開かれた記者会見。左から神農彩乃さん、夫の神農諭哉さん、被害者支援代理人をつとめる髙橋正人弁護士(筆者撮影)
<第2回公判後の記者会見より>(2026.2.4)
●加害車のドライブレコーダー映像を見て感じたこと
【父親・神農諭哉さん】
今日、改めてドライブレコーダーの映像を見て、ものすごく辛い気持ちでいっぱいになりました。何回か見たことはあるんですけれど、やはり、とてもじゃないけれど、僕は今まで見ることができなかったんです。
息子に人工呼吸とか心臓マッサージをしているときの映像がすごく鮮明に蘇って、ドライブレコーダーを見るだけでも涙が必然的に流れてきてしまう……。
ただ、そんな中で、(被告の)竹崎さんは、自分の車のことばっかり気にしていた。そんな人が許されるのってどうなのか、これが重い罪にならなきゃおかしいんじゃないのか、そういうふうに感じているのは正直なところです。
今回、証人尋問に立った理由としては、当然思い出したくない記憶ではあるんですけど、自分が見たこと、感じたことを思い出し、当時を振り返ってそれをしっかりと伝えてみんなに本当のことを知ってもらいたい、その強い気持ちがまず第一でした。

神農さんのドライブレコーダーに記録されていた正面衝突直前の様子を静止画像にしたもの。竹崎被告が運転する対向車がセンターラインを越えてきているのがわかる(遺族提供)
【母親・神農彩乃さん】
初公判のときに(被告の)供述調書が出たのですが、その中には基本的に、車の性能の話とゴルフの話しか書かれていなかったので、『こんなに車のことを話すんだ』と、衝撃を受けました。それにプラスして、被告の車のドライブレコーダーを初めて見たときは、本当に自分の車の心配だけをしていることに、さらにショックを受けました。
音声が入っている動画は110分間くらいなのですが、そのうちの47分間に、竹崎被告の声が入っていたので、私はイヤホンをして、おそらく100回ぐらいは聞いたんじゃないかなと思います。
*筆者注/加害車の車内では終始大きなボリュームで音楽が流れていたため、他の音声が判別しづらい状況だった。
事故直後、私は動けなかったので見えてはいなかったのですが、主人が息子の名前を必死で叫んでいたので、このドラレコの中にも必ずあの声が入っているはずだと思いました。そして、繰り返し聞いていく中で、やはり、「こうえい!」と、何度も何度も叫ぶあのときの声が入っていたことが確認できました。
そんな中、(竹崎被告は)ずっと、自分の車がグチャグチャになっていることを気にしていました。
実際にドラレコに映り込んでいたのは、自車の前輪を確認しながら出てきて、フロントが大破しているところを確認する姿でした。
本当に、2メートルもないと思うんです。その先で、主人が叫びながら息子の心臓マッサージと人工呼吸と救護活動していたにもかかわらず、被告は自分の車しか見ておらず、気にも止めない、という状況が明らかだったので、今回、その映像を裁判に出してもらえたことで、被告の人間性の部分がしっかり伝わったかなと思っております。

事故の少し前、よちよち歩きを始めたばかりの煌瑛ちゃん。棺には祖母からの1歳の誕生日プレゼントだった新しいスニーカーを入れたという(遺族提供)
●証人尋問で伝えたかったこと
【神農諭哉さん】
証人尋問で伝えたかったのは、やはり被告の悪質性でしょうか。事故の相手のことを一切気にせずに、自分の車のフロント部分を確認しに行ったり、車内を見て、「もう、ぐちゃぐちゃやコレ」と言ったり、そういう人間性だから、あのような対面の自動車専用道路で他人の迷惑を考えず、自分の靴を履き替えたいのか何なのか知らないけれども、自分のしたいことをやって事故を起こした……。それが結果として、全てなんじゃないかなと僕は思っています。
●「ながら運転」の危険性と法改正について
【髙橋正人弁護士(被害者支援代理人)】
先日、法制審議会の部会で危険運転致死傷罪に関する案が出来上がりました。
ここでは「数値基準」という議論が出ているのですが、もともとは「ながら運転」も危険運転致死傷罪に入れるべきではないかと話し合われていました。しかし、排除されました。「ながら運転」の定義は非常に難しいです。
本件では、靴の履き替えをするために助手席の下にあるサンダルを取ろうとし、自動運転が切れてしまった。悪質性からいえば、危険運転致死傷罪に相当するはずです。
今日の尋問で副検事は、「危険運転致死傷罪ということも検討したけれど、法制審の議論でもあったように、『ながら運転』は該当しないので、残念だけれど諦めた」と言いました。そのときに裁判官が大きく頷いていたのを見て、私は裁判官も同じ気持ちを抱いてくださっているなと思いました。
こうした「ながら運転」についても、今後の法改正ではもう少し明確な言葉で限定しながら、危険運転に盛り込むような動きがあってもいいんじゃないかなと思っています。
●第2回公判を終えて
【神農諭哉さん】
裁判には、遠いところからも応援に来てくださっており、感謝の気持ちしかないです。納得がいく結果が出るかどうかというのは正直分かりませんが、皆さんのお気持ちを踏みにじるようなことだけは絶対にしたくないし、亡くなった息子に対してもそんな父親の姿は見せられないなという思いがあります。
最後の最後まで、自分がやると言ったことはやり続ける、応援してくださっている方のためにも、納得できるまで闘い続けたいと思っています。
そして、裁判官には、もっともっと同じ被害者遺族の方々に対して目を向けてもらいたいです。こんなに苦しんでいる人がたくさんいるっていうことを。事故やどんな犯罪にしてもそうですが、なぜ被害者を守ろうとしないのか、被害者を救っおうとしないのか。なんでこんなに加害者寄りの法律なのか、すごく疑問を感じています。
(記者会見の抜粋ここまで)

対向車に正面衝突され、フロント部分が大破した神農さんの車(遺族提供)
■加害車のドラレコ音声を100回以上聞き直した妻
上記、記者会見でも語られたように、第2回公判では、加害車のドライブレコーダーに写っていた被告人の姿と、そこに記録されていた音声が重要な証拠のひとつとして出されました。
しかし、そこに至るまでには、遺族による血のにじむような努力がありました。
実は、加害車の車内では終始大きな音量で音楽が流れており、周囲の音声はその音にかき消されて聞き取ることが困難でした。しかも、夫の諭哉さんは、事故直後の凄惨な状況を思い出すのがつらく、「こうえいも、彩乃ちゃんも、助けてやれなくて本当にごめん、ごめん……」と言って泣いてしまい、自身ではその映像を確認することができませんでした。
そんな中、妻の彩乃さんは、この動画の音声を一人で100回以上再生しながら、イヤホンで聞き続けたのです。
彩乃さんは、私にこう話してくださいました。
「衝突の衝撃で加害車のドラレコ映像は停止してしまったと聞いていました。でも、衝突後16分ほどで突然復活し、26分後にはフロントカメラに、右前輪を確認しながらぬっと出て来た被告本人の姿が映っていたのです。
被告は自分の車のフロント部分を覗き込み、損傷を確認して周りを見渡し、振り向きながら舌打ちをし、気に食わないような顔をして、また右の方へ消えて行きました。最初にそれを見たときは、まさか映っていると思わなかったので本当に衝撃でした」
それは、わずか20秒程の映像でした。
しかし、まさにあのとき、被告の視線の先では、命が消えつつある煌瑛ちゃんに、懸命な救命活動が行われていたのです。
事故直後、朦朧とする中、それでも自身の耳の奥に焼き付いていた夫・諭哉さんの悲痛な叫び声。そんな中、加害者はこちらに近づきもせずいったい何をしていたのか……。
そこで彩乃さんは、それを突き止めるため、音声を正確に聞き取ろうと決意しました。何度も何度も動画を再生し、どうしても聞き取れない部分は専門家に有償で分析を依頼。その作業は、どれほど辛く、苦しいものだったでしょうか。
「おそらく、副検事さんもかなり聞き込んでくださったと思います。でも、夫の声だけは私にしか聞こえないと思ったので頑張りました。その結果、『こうえい、アカン!』と必死で叫ぶ夫の声がしっかり記録されていることがわかったのです。
さらに聞き続けたところ、被告が車内でひとりのときに、怒ったような口調で、『もぉぉぉ、なんやコレ!』という言葉を発しているのも確認できました。少なくともこの間に、被害者である私たちに対して、『大丈夫ですか?』『怪我人はいるんですか?』といった言葉は一回も発していませんでした」(彩乃さん)
また、加害車のドライブレコーダーには、助手席に乗っていて内臓を損傷していた彩乃さんが運転席側から運び出されるまでの一部始終も記録されていました。
「私自身この映像を見て初めて、衝突から約40分後にようやく自分が搬送されたことを知りました。実は、被告はその時点でも、自車内で、『もー、コレ、ひどいなこりゃぁ!』と、怒ったような口調で言葉を発しており、自分が起こした事故にもかかわらず、被害者に対して全く関心がないのがよくわかりました」
衝突の瞬間だけでなく、ながら運転の様子から、事故後の救護の有無までも克明に記録していたドライブレコーダー。
彩乃さんはこう語ります。
「ドラレコは絶対に必須ですね。なかったらと思うと、恐ろしいです。何より、自分を守ると思います」
次回公判は4月13日、竹崎被告への尋問が予定されています。
被告はなぜ、運転中に靴を履き替えようとしたのか、そして、自車のドライブレコーダーに記録されていた自身の行動について何を語るのか。注目したいと思います。

2月4日、第2回公判を終え、高知地裁の前に立つ神農さん夫妻。辛い記憶に向き合い、互いに協力し合いながら真実を追及している(筆者撮影)
<参考記事>
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