【神奈川県警】交通取り締まり不正の“被害者”が激白「『信頼を損ないかねない』だって?いや、もはや詐欺だろ」
2026.2.20(金)

目次
1.「やっていることは投資詐欺と同レベル」
2.キップを切られた場所はおそらく彼らにとっての「生け簀」
3.神奈川県警と徹底抗戦
4.反則金を返せば済む問題ではない
神奈川県警第2交通機動隊が反則切符にウソの記載をし、違法な交通取り締まりを繰り返していた問題が明るみに出てから1週間、ついに警察庁長官が会見で本件について言及した。県警はすでに約2700件の不正を認めて違反を取り消し、少なくとも納付済みの反則金3500万円を返還する予定だというが、いったい現場では何が起こっていたのか……。
昨年1月、神奈川県の小田原厚木道路で、第2交通機動隊による違法取り締まりを受け、本件が発覚する1年前に告発と是正要求を行っていたという「道路交通評論漫画家」の芳井かずみ氏に、ノンフィクション作家の柳原三佳が話を聞いた。
「やっていることは投資詐欺と同レベル」
――2月19日午前、警察庁の楠芳伸長官が定例記者会見で今回発覚した神奈川県警の大不祥事に触れ、「取り締まりに対する国民の信頼を損ないかねない重大な事案だ」と述べ、全国の警察に指導する考えを示したそうです。

2月19日、記者会見で交通取り締まりついて全国の警察に指導を行う考えを示した警察庁の楠芳伸長官(写真:共同通信社)
(参考)警察庁長官「国民の信頼を損ないかねない」 神奈川県警の不正な交通取り締まり問題で(ANNnewsCH)
この会見をご覧になって、『切らせない! 交通違反キップ』(ぶんか社)などの著書もある芳井さんとしては、専門家として、そして当事者としてどう思われましたか?
芳井かずみ氏(以下、芳井)「信頼を損ないかねない」って? いやもう完全に損なわれています! どうやって信頼回復するかでしょう。今回の問題はプルデンシャル生命で露見した投資詐欺と同レベル。はっきり言って、数字を作って(反則)金を“盗ってる”わけですから『詐欺』、犯罪です。
――報道によれば、今回発表された不適正な処理は2022年3月~2024年9月の期間に絞って調査されたもので、このうち数件分については「虚偽有印公文書作成・同行使」の容疑で書類送検するとのこと。組織的に不正を繰り返していたことを認めている第2交通機動隊第2中隊の第4小隊は、主に「小田原厚木道路」という自動車専用道路で取り締まりを担当していたそうですが、なんと芳井さんはまさにこの道路で速度違反の切符を切られたのですね。
芳井 そうなんです。2025年1月20日、都内の自宅から熱海まで知人に会いに行くため車で下り車線を走っていたのですが、午後12時43分頃、覆面パトカーの追尾を受け、70キロ制限の道路を93キロで走っていたとして取り締まりを受けました。
――ということは23キロオーバーですね。
芳井 小田原東ICのETCゲートを徐行速度で通過した直後ですからそんなに出てるワケはないと思い、取り締まった覆面パトの乗務員Y巡査とU巡査部長に説明を求めました。
芳井さんが神奈川県警の取り締まりを受けた小田原東インターチェンジ付近
彼らは小田原東ICで一般道から本線に合流する地点で本線を走行する私の車を発見。その後の取り締まりに入ったパトカーの動きをシミュレーションすれば、加速車線時速40キロ?そこから本線合流後、追いつくために時速100キロ以上に加速?時速93キロの等間隔等速度での100m追尾計測~計測完了。本線合流地点から計測完了地点まで、およそ450m足らずですから、もう“無理くり”ですね。
キップを切られた場所はおそらく彼らにとっての「生け簀」
――つまり、この合流部分のレーンに潜んでいた覆面パトカーが、極めて短い距離で取り締まりを行ったと?
芳井 そういうことです。合流地点の待ち伏せは、白バイや覆面パトのよくやる手法。私は小田原東のETCゲートで一旦速度を落としてますから、ダーッと走りっぱなしで行ったわけじゃない。そこから加速して本線へ行くんですけど、その合流地点でこっそり張ってたパトカーが、赤色灯もつけずに追いかけてきたわけです。

*イメージ写真(写真:recorder.of.the.time/イメージマート)
――芳井さんは捕まってすぐ、警察官に抗議されたのですか?
芳井 もちろんです。速度がどうこういう以前に、明らかにルールから外れたおかしな取り締まりだと思ったので。
警察庁は全国の都道府県警察に取り締まりに関するルールについて、詳細な通達を出しています。小田原厚木道路は自動車専用道路なので、速度計測するなら対象車から等間隔等速度で150~200メートルの追尾をして測定しなければならないとされています。どう考えても450mの距離じゃ足りないし、たった100mという追尾距離も短すぎるのは一目瞭然でした。
――さすがは芳井さん、お詳しいですね。
芳井 計測終了地点から先は橋になっていて、先が下り坂になるから警察はそこまでに計測を終わらせたかった。下り坂での計測は不適切というルールもあるので、その前に獲物を捕まえてしまおうと思ったんでしょう。たぶんこの場所は、彼らにとっての『生け簀』みたいなものですね。
――生け簀…ですか…。
芳井 そう、入れ喰いです。ちなみに箱根熱海方面に行くこの道路は、県外からの旅行者も結構走ってますが、他府県ナンバーは狙い撃ち。何故ならゴネたりすると後日、遠隔地から呼び出されたりして面倒なので、素直に払ってくれる。
あと、『23キロ』という数字も違反者を納得させる絶妙な数字なんです。反則金額や点数の関係で、20キロぴったりとか30キロ以上とかにするとモメやすいので、相手が納得しやすい数字を作るんです。ちょうどいい塩梅の数字が『23キロ』なんですよ。実際にこの数字を捏造されているケースはかなり多いです。
神奈川県警と徹底抗戦
――23キロ、ですか……。小田原厚木道路を走行中、23キロオーバーで捕まったことがある人はぜひ連絡をいただきたいものですね。で、芳井さんはその後どんなアクションを起こされたのですか?
芳井 神奈川県警による明らかな不正検挙を確信した私は、現場検証を行うよう求めました。そこまで要求する人なんてあんまりいないでしょうから、彼らはしどろもどろになっていましたが強く要請して、後日現場道路を止めて現場検証をやりました。そして、本件は否認事件として検察庁に送られたのです。
一方、私はこの取り締まりについて『交通反則告知是正通知書』を要求、つまり「この取り締まりは違法だから、取り消せ」という要求(*文末の資料参照)を神奈川県警に提出しました。
――その要求をされた後は、どうなったのでしょうか?
芳井 結局、検察庁は不起訴処分という判断を下しました。理由の説明がないのでどのような判断をしたのか、こちらには何もわかりません。やはりこんなものは立件して裁判などできないということでしょう。私としては裁判になって、いかにでたらめな取り締まりが行われたか、法廷で明らかにしたかったんですが。
――不起訴になったということは、反則金は払わなくていいのですか?
芳井 そうです。ただ、反則金は払わなくて済んだけれども違反点数(2点)はそのままです。是正されて、この取り締まり自体が無効になれば元に戻りますが、その場合でも私は東京都民なので、その手続きをするのは警視庁。ややこしいことこの上ない。
組織的な不正摘発が明らかになり、今や神奈川県警は火だるま状態ですが、これを受けて、この先彼らはどうするのか。
反則金を返せば済む問題ではない
――たしかに、芳井さんの件は2025年の1月ですから、今回発表された2700件の中には入っていません。ということは、まだまだ不正摘発の被害者はいるということです。これは反則金を返せばよいという問題ではありません。免停や取り消しになった人、ゴールド免許から脱落して自動車保険料が上がってしまった人、運転手の仕事を失った人……、計り知れないほどの損害が出ているはずです。
芳井 大変だと思いますよ。
――芳井さんだからここまでできましたが、何も知らないドライバーは、捕まったらそのまま罰金や反則金を納めているんでしょうね。最近では車の前後にドライブレコーダーをつける人も多くなってきたので、おかしいと思ったらそういう証拠を突きつけて声を上げることが大切ですね。それにしても、警察がいまだにこんなことをやっているなんて……。
芳井 『取り締まりしやすい場所で、取り締まりしやすい相手に、取り締まりしやすい証拠を作って点数をあげる』。これは、昭和42年の警察庁次長通達で全国の警察に対し指示している内容とは真逆です。
(参考)警察庁依命通達(昭42・8・1 警察庁乙交 警察庁次長)
長年の効率重視の取り締まりのやり方が伝統となって、感覚が麻痺しているんだと思いますが、不正検挙は神奈川県警だけの問題じゃありません。
実際に私は東京都内でも何度か違法な取り締まりを経験しています。警察組織では、たくさん取り締まるとよくやったと評価が上がる。ですが不正な取り締まりで点数を稼いで、本当に必要な危険防止のための取り締まりや活動がおろそかになるなら本末転倒。現在神奈川県警の交通機動隊の職員は、苦情の対応にてんてこ舞い、本来の職務ができない始末です。
――思わずため息が出ますが、これは犯罪なのでしっかり捜査してもらいたいものです。そして私たちも、おかしいと思ったらとにかく声を上げることが大事ですね。
芳井 17年前に出版した『切らせない!交通違反キップ』という本の表紙に「そんなアナタがカモなんです!」というセリフ付きのイラストを描きました。
――カモにはなりたくないです……。
芳井 そうですよね。カモにならないためには声を上げるしかありません。市民が黙っていたら、彼らは増長し、暴走するだけです。警察の職務を監視するのが市民の役目でもありますね。
――楠警察庁長官は会見で、「交通の安全を確保する上で、危険性の高い違反行為に重点を置いて取り締まりを行う必要がある。その前提として、取り締まり自体が適正に行われなければならない」と述べたそうです。
芳井 長官には、こちらの資料をよく読んでいただきたいですね。そして皆さんには、神奈川県警の2700件不正検挙問題や、それに類する他府県の事例について国民としての意見や要望があれば、ぜひ警察庁にドシドシ申し入れをしていただきたい。こういう権力組織は、国民が声をあげなければ変わりません。
――ありがとうございました。
<資料/芳井さんが県警に送った改善要求>
●神奈川県警第二交通機動隊・Y巡査の職務に、重大な法令違反があった件について下記の通り告発し、改善要求するものである。

芳井さんが神奈川県警第二交通機動隊の巡査に切られた青切符(画像は一部加工しています)
Y巡査の執行した当該取締り(ママ。以下同)は適正な法的手続きに基づく反則告知とは到底言えないため、速やかに『交通反則告知是正通知書』による撤回手続きを執るように強く求める。
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Y巡査は、令和7年1月20日13時頃、小田原厚木道路下り車線を走行する当方運転の普通乗用車に停止を求めた。止めた理由は速度違反があったとのことであるが、その内容に疑義があるためY巡査に詳細の供述を求めた。その結果、以下のような事実が判明した。
① Y巡査は、小田原東ICで小田原厚木道路下り車線に合流し、その付近で当方車両を発見した。
② 速度超過の疑いがあるため、乗車中のパトカーを加速させたが、制限速度を超えた地点で赤色灯をつけていなかった。
③ 酒匂川手前までの区間100mの等間隔等速度の計測追尾を行って計測を終了し、ここで停止の指示のために赤色灯をつけた。
④ 『①追尾開始地点』から『③計測終了地点』まで450mであり取締りに要した距離は極めて短い。
よって当該取締りを以下のように評価する。
●取締り自体が違法である。
●取締りに要した距離・時間ともに拙速かつ不十分で、100mという計測距離自体も不確かで不十分、証拠能力に欠ける。
●悪質性・危険性・迷惑性のない軽微な違反については警告指導を旨とし、取締りのための取締りを行なうことはあってはならないとする警察庁の通達に反している。
●その他、法的手続きにおいても違法な職務の執行があった。
交通指導取締りの規範を示すべき交通機動隊職員が、このような職務を執行することは、善良な市民として看過はできない。
また、当該取締りは適正な法的手続きに基づく反則告知とは到底言えないため、速やかに『交通反則告知是正通知書』による撤回手続きを執るように強く求める。
警察法第79条に基づき、神奈川県公安委員会への苦情申出をするべき事案であるが、当該巡査と指揮命令をとる直属上司、交通機動隊責任者に弁明の機会を与える。また県警交通部責任者においては、当該事案に対する見解と再発防止策についての返答を強く要求する。
